里津子 中山
カルシウムパラドックスって何?
更新日:2022年10月16日
カルシウムをとりすぎると結石や動脈硬化になると多くの人が思っていますが、これは全くの誤解です。食物からとるカルシウムが不足すると、骨からカルシウムが溶け出して、血管や脳などの柔らかい組織の中に入り込んでしまいます。これをカルシウムパラドックス(カルシウムの逆説)といいます。
■カルシウムは生命活動の鍵を握る重要なミネラル
カルシウムは、細胞の一つひとつにさまざまなメッセージを伝え、それぞれの役目を果たせるようにしています。たとえば、心臓の拍動も、カルシウムが心臓の筋肉に出入りすることによって保たれています。
生命を維持し健康を保つために、血液中のカルシウムイオン濃度は、細胞の外側10,000に対し、細胞の中1になるよう厳しく一定に保たれています
そのため、食物からとるカルシウムが不足すると、自分の骨からカルシウムをとり出して血液中の濃度を保つという、他の栄養素とはまったく違う仕組みがあります。
骨がカルシウムを蓄える銀行なら、副甲状腺ホルモンはキャッシュカードのような働きをします。カルシウムが足りないとき、必要量以上のカルシウムが引き出されてしまいます。
余ったカルシウムが、もとの骨に戻ることはなく、血管や脳などの組織、または細胞の中に入り込み、結石となって健康を脅かすことになるのです。
カルシウムが取り出され痩せてしまった骨は、骨折しやすいだけでなく、高齢者では造血機能の低下から貧血のリスクが高くなります。
食物からとったカルシウムは、必ず腸から吸収されるので血液中にあふれることはなく、特殊な体質の場合を除き、必要のない場合は、そのまま便として体外に排泄されてしまいます。
■カルシウムの働きについて詳しく知りたい方にお勧めの本
藤田拓男 著
『カルシウムのすべて』
1985年12月20日初版発行
株式会社あき書房